【高校デビュー以下略プロジェクト】

12/21
前へ
/28ページ
次へ
「そろそろ席に戻ったら?」 「すぐそこだし。もう少しここにいるよ」  落ち着かない。他人に終始背後に立たれている。しかも、相手はナツキだ。 「ねえ、トワ君」 「何」 「何でもなーい」 「……」  さっきからずっとこの調子だ。いちいち返事をしてしまう僕も悪いのだろう。次に話しかけられたら、絶対に返事をしない。 「あ、あの」  何だよ、急にどもり出して。 「……あの」  手を変えてきたのだろうか。どのみち、僕は返事を 「聞こえてるでしょ? 返事をしてあげなさいよ」 「痛い痛い痛い」  サキに頬をつねられた。涙を滴らせながら見ると、サキの隣に見知らぬ女子がいる。 「あんたに無視されて、泣きそうだったんだから」  僕は頬をつねられて泣いています。 「サキちゃん、ありがとう……」  律儀にお辞儀をすると、二つに束ねた髪が揺れる。 「あ、あの。本、好きなんですか?」  指差したのは、僕の机に置いてある本。  褪せた表紙の、古い本だ。 「うん。好き」  それを聞くと、ぱあっと音でもしそうなほどに顔を輝かせた。 「私、【本間 栞】っていいます。あの、よかったら図書室に行ってみませんか?」  図書館か。本がたくさんあるところは好きだ。学校の中も回ってみたいし。 「いいよ」
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加