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「そろそろ席に戻ったら?」
「すぐそこだし。もう少しここにいるよ」
落ち着かない。他人に終始背後に立たれている。しかも、相手はナツキだ。
「ねえ、トワ君」
「何」
「何でもなーい」
「……」
さっきからずっとこの調子だ。いちいち返事をしてしまう僕も悪いのだろう。次に話しかけられたら、絶対に返事をしない。
「あ、あの」
何だよ、急にどもり出して。
「……あの」
手を変えてきたのだろうか。どのみち、僕は返事を
「聞こえてるでしょ? 返事をしてあげなさいよ」
「痛い痛い痛い」
サキに頬をつねられた。涙を滴らせながら見ると、サキの隣に見知らぬ女子がいる。
「あんたに無視されて、泣きそうだったんだから」
僕は頬をつねられて泣いています。
「サキちゃん、ありがとう……」
律儀にお辞儀をすると、二つに束ねた髪が揺れる。
「あ、あの。本、好きなんですか?」
指差したのは、僕の机に置いてある本。
褪せた表紙の、古い本だ。
「うん。好き」
それを聞くと、ぱあっと音でもしそうなほどに顔を輝かせた。
「私、【本間 栞】っていいます。あの、よかったら図書室に行ってみませんか?」
図書館か。本がたくさんあるところは好きだ。学校の中も回ってみたいし。
「いいよ」
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