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澄んだ水の底。ほぅ、とため息を吐く。
私にはもう呼吸をする必要が無いから、泡は生まれない。
湖に沈んでから、もう何年経っただろう。
両親の手を取らずに、ここに残ると決めてから、もう何年経っただろう。
後悔はしていない。そう、断言できる。
昔住んでいた二ホンという国では、この世に何かをやり残した魂はユウレイとして留まってしまうと聞いた。
私が残したのは、恋心。願えば叶ったのかもしれない。
けれど、叶えられなかった初恋。
私は恋慕を抱いたまま、湖に沈むルサールカになってしまった。
涙を流しても、湖の中では他の水と見分けがつかない。
私は水面へ顔を出した。湖の上空に、青い月が昇っている。
指を組んで、祈りを捧げた。届かないと分かっていても、日課になってしまっている。
「もう1度……もう1度だけ……会いたい」
ふいに風が吹いて、水面を揺らした。周囲の木々も揺れる。
風はひどく冷たくて、動かないはずの私の胸をざわつかせた。
湖に潜ろうとした時。
「!」
冷たい瞳が、私を見つめていた。
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