家に憑く者

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 いったい、誰がこんな酷いことをしたのだろう。訳が分からない。現実かどうかさえわからなくなっていた。私は、目を腫らせて泣きじゃくる。学校に行く気がせず休むことにした。友達が迎えに来た声がしてきたけど、「具合が悪くて休ませるからごめんね」との母の言葉が聞えた。  二階の自分の部屋で私は蹲り、俯きじっと床をみつめて小さく溜め息を漏らす。  なんで、どうして。  窓から庭を覗いて見たけど、やっぱりカケルの姿はない。犬小屋だけがそこにあった。後でカケルを火葬場で葬ってあげるなんて父は話していた。血を流すカケルの姿がまだ目に焼き付いている。目を閉じても酷い姿が瞼の裏に映し出されてしまう。  もう一度、窓の下の庭に目を向けると溜め息がまた出てしまった。  犬小屋から左に目を向けると小さな祠と朱色の鳥居が目に留まる。  昔から私の家にはお稲荷様が祀られている。田舎の家にはよくある風景だ。神様の前で生き物を殺すなんて、人でなしだ。父は警察にも話すと言っていた。きっと大丈夫だ。もう酷いことなんて起こらないはずだ。  最初はそう思っていた。けど、カケルの死は始まりに過ぎなかった。 ***
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