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「ごめん、また金縛りだった」
顔を洗って一息すると、アホな事をしたと思い叩いた点は謝りましたよ。
理由も話したら、この時は家族の間でも私が頻繁に金縛りに遭っていると知られていたので親にも叱られませんでした。
嫌な事に金縛りって、なんとなく前兆が分かるんですよね。
あ、来るって。
最初はパッと目が覚めた所にガンッと来ましたが、それ以後はふと目が覚めた時の部屋の空気で察してしまうのです。
嫌な感覚でした。
意識が遠くならず、ハッキリしたまま身体の感覚がスウッと遠くなってガッと来る。
有り難いのは、金縛りだけで他のオプションが無かった事でしょう。
不気味な声が聞こえる事も、妖しい影が見える事も無い。
まあ、気配はそこはかとなく感じる訳ですが。
そのうち知識を身に付けて、自分の遭っている金縛りは心霊系じゃない。身体と脳の働きがおかしいだけだとの考えに至りまして、無視して眠る手段に落ち着いた訳です。
あ、また金縛りだ。いいや寝よって。
気持ちに余裕が出来たからか、金縛りに遭う回数も減ったので、私個人の対策としては間違ってないかと思います。
金縛りって抵抗すると疲れましたし。
けれど、ある時一度だけ見ちゃったんですよね。
胸元に餓鬼みたいなものが蹲っているのを。
一瞬は怖かったものの、この頃には金縛りに遭っても寝る技術を体得していたからでしょう。見間違いだと意地で納得し、無視して寝ました。
そして朝、家族に話して忘れました。
驚いたのはその後です。
妹以外、家族の全員がその餓鬼みたいなものを見ていたと教えられたんですよね。
社会人になってからなので、良く覚えていたなとも思いましたが。
で、この時です。周りにいた友人の一人が名(迷)推理を披露してくれました。
「そいつは妹さんの生霊だよ。だから妹さんだけ見ていないんだよ」
思わず納得。ん、しちゃいけないか。
でもあれが妹の生霊なら、金縛りの八つ当りで叩いた事、根に持っていたのかなぁとも考えてしまいます。
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