―33[終わりと言う名の制裁]―

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『お疲れ様。』 誠が静かに話す。小毬は穏やかに笑っている。 誠は話を続ける。 『終わったんだね…全部。』 「後悔してない?」 『なんで?』 「結果的に村が無くなっちゃったし…」 『後悔なんかしてないよ。この村は無くなったけど、僕たちはこれからがスタートなんだから…』 「そっか…ありがとう。」 『うん…。』 「ねぇ誠?最近考えてみるの。なんで私、生きてるんだろうって…本当はあの日私は死ぬはずだった。」 『…。』 「だけど…私は生きている。偶然と助けを借りて。」 『偶然と助け?』 「そう。あの日誠が私にジュースを溢さなければ冬服に着替えることもなくて、洞窟の寒さに凍えて死んでた。 それから洞窟にあった子供サイズの穴。あれ、このみちゃんのパパが掘ったの。」 『このみちゃん?』 「私の1年前のイケニエ。勝浦このみちゃん。」 『あぁ…勝浦さん。』 「勝浦さんがあの穴を掘っていなければ私は外に出られなかった…。」 『そうだったんだ…。』 「そして正也さんと益美さん。私をずっと育ててくれた。今回の計画にも協力してくれた…あの2人がいたから私はここまで生きてこれた。」 『…小毬はこれからどうするの?村に戻るか?』 「ううん…私はこれからも原田夫妻のところで暮らす。私にとって正也さんと益美さんはもうパパとママなんだ…。」 『…そっか。せっかく小毬と一緒にいられると思ったのに…』 「大丈夫。生きてるんだから。会いたい時にはいつだって会えるよ。それよりも誠?お願い聞いてくれる?」 『なに?』 「あの2人をちゃんと見守ってあげててね。悠太と萌果ちゃんに私達みたいな悲しい恋はしてほしくないからさ…。」 『わかったよ。小毬も時々は遊びに来いよな。待ってるから…。』 「うん。絶対に遊びに来るから。」 小毬と誠は2人で寄り添って村を見ていた…。
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