4人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
それから1週間経過。
マサムネさんは毎日研究で忙しく、なかなか会う時間がない。
仕方ないか……。
私にたくさんの愛を与えてくれるはずの人なんだもの。
大事な研究の邪魔をしてはいけないと思い、ひたすら彼からの連絡を待った。
すると電話がかかってきたのだ。
『麗香さん。僕たちの大事な家族計画について話したいことがあるんです。喫茶"Nail of a cat"で会いましょう』
家族計画!とうとう具体的な話を進めるつもり?
私は彼からの愛を求め、約束の場所"Nail of a cat"に向かった。
「麗香さんには話しましたよね。私の母が入院していると。実は、緊急で手術を受けなければならなくなりまして。その手術費用が100万円かかるそうなんですが……。お恥ずかしい話なんですが、その手術費用を直ぐに用立てできず困っているんです。私は現金をあまり持たない主義でして、私の貯金はほとんどスイス銀行にあります。麗香さん、お願いします!今回は急だったものですから、ほんの少しの間だけ100万円貸していただけませんか?」
家族って、お母さんのことだったのね……。
私がマサムネさんからのたくさんの愛を欲しいのなら、私からも愛を示さなくてはいけないのね。
「分かりました。でも私も今すぐにという訳にはいきませんので、明日にでも準備が出来次第、連絡します」
「明日ですね、承知しました。麗香さん……ありがとうございます。やはり貴女は私の運命の人です。愛しています」
言葉なんかどうでもいいわ。
後で何倍にも返してくれるわよね?
とびっきりの……愛を。
「私もマサムネさんを愛してます」
マサムネさんのお母さんが入院しているという病院には、たまたま友達が勤めている。
お母さんの手術のこと、聞いてみよう。
『伊達さん?いまうちの病院に入院中の患者さんで、伊達さんなんていないけど?』
あら?もしかして複雑な家庭環境なのかしら。
名字が違うということも考えられる。
「じゃあ、緊急手術の予定がある60歳くらいの女性の患者さんは?」
『うちの病院で緊急手術とか、有り得ない。何かの間違いじゃない?』
……どういうこと!?
これは可笑しい…………。
あのお方に報告しなければ。
翌日。
私の婚約者だった、伊達マサムネ(偽名)は逮捕された。
結婚詐欺の常習犯らしかった。
最初のコメントを投稿しよう!