1492人が本棚に入れています
本棚に追加
/115ページ
ソラの不器用敬語は小学生時代からの筋金入りで、家族はもちろんのこと、塾や家庭教師も首を傾げるほどの不器用さなのだ。
古典や現代文、漢文でさえ高得点を叩き出す成績を持っていながら、敬語の使えなさはある意味才能で。
直したい、直さなきゃ、と常々思っていたが全くうまくいかなくて今に至っているのに。
「今週中に合格できたら、来週にお披露目する!ワタル、楽しみにしてて!」
「うんうん!!楽しみにしてる!!」
今日は月曜日。今週は始まったばかりなので、合格を貰えるチャンスはまだまだある。
10年来の付き合いだった不器用敬語。いよいよさよならの季節がやってきたようだ。
顔がふやけているソラを更に一撫でした。
「ちょうど土日もあるし俺がソラの好きな食べ物、何でも作るよ!!」
「ほんと!?おれカツカレー食べたい!!やっぱりカレーは家の味の方が好きなんだ!」
「わかった、任せて。とんかつも手作りするから」
「やったあ!!」
ソラのことだから、小学生の作文や日記と同等の言い回しで喋れる程度だろう。しかしそれで充分に嬉しい。
双子の兄の小さな成長に、心からの祝福を送ったのであった。
────────まあ。よくよく考えれば小学生レベルの言葉遣いじゃ、副会長が合格点を出す筈が無いのだが。浮かれていたので考えがそこまで及ばなかったのである。
最初のコメントを投稿しよう!