一話 吸血鬼の涙

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一話 吸血鬼の涙

 吸血鬼が流す涙は紅く、瞳から離れると結晶となり零れ落ちる。その結晶はあまりの美しさに、マニアの間では『紅血』と呼ばれ高く取引されている。曰く、『紅血』は吸血鬼がこれまでに吸血してきた血液の混ざり合いから生まれるもので、命の輝きを放つ結晶だと考えられているようだ。  しかし、吸血鬼の流す涙が全て『紅血』になるわけではない。ごくまれに、吸血鬼は結晶になることもなく、とても美しい透き通った涙を流すことがあるとされている。どのような条件下で、『紅血ではない涙』が流れるのか。その涙の意味は未だ解明されていない。  現代では、多くの異人種が人間に化け、本当の姿を隠して、人間として生きている。その中でも、特に珍しい異人種である吸血鬼。一生の中で、『紅血ではない涙』を見ることができる者はほとんどいない。
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