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アリサは息を切らせ、自分の部屋に駆け込んだ。両手に『荷物』を抱えたまま、顔を半分だけ出して廊下を覗く。左右に果てしなく続く回廊に人影はなかった。耳をすましても何の物音も聞こえてこない。
「よかった。見つかんなかったみたい」
安堵の溜息をついた時、腕の中の荷物がごそごそと動いた。アリサはあわてて白いシーツに包まれたそれを部屋の奥、自分のベッドに運んで行った。そっとマットレスの上に降ろす。シーツをかき分けてつぶらな瞳が現れ、アリサを見上げた。
「もう大丈夫だからね」
アリサは微笑んでその生き物を見つめた。か細い手足を縮こまらせ、体を細かく震わせている。
「ごめんね、寒かったでしょ」
優しくシーツを外し、自分の毛布で包みこんだ。
「先生達は酷いよね。あなたにだって心があるのだろうに、物か何かのように扱って」
自分をまっすぐに見上げる瞳を見ているとアリサの中に暖かいものが湧き上がって来た。
「名前を決めなくっちゃね……。そう、あなたはオロ、いつもケージの中でおろおろしていたから。待ってて、何か食べ物を持って来てあげる」
アリサが立ち上がりかけた時、シュッと音を立てドアが開いた。
「あっ!」
戸口に立つスザク先生は見たことの無い険しい表情をしていた。
「どきなさいアリサ。そいつは危険よ」
「先生、この子は……」
彼女は耳を貸さなかった。アリサを押しのけ、ベッドに走り寄ってオロから毛布を毟り取った。
「ほら、ご覧なさい」
アリサは息をのみ、両手を口にあてた。露わになった裸の体でオロは小さな凶器を振り立てていたのだ。アリサの人差し指ほどの大きさしかなかったけども。
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