アリサ

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「隙があれば私達の体に自らの徴(しるし)を刻みこもうと狙っているの。今となっては蟷螂の斧に過ぎないけどね」 「じゃあ、オロは……」 「そう、こいつは『男』。かつては私達人類の半分であったもの、そしてその凶暴性と破壊衝動で世界を破滅させかけたもの、その数少ない生き残りよ」  吐き捨てるように言ったスザク先生は毛布を両手で広げるように掲げ、オロに躍りかかると一気にぐるぐる巻きにしてしまった。腰のあたりをつかんで持ち上げ、ひっくり返して肩に載せる。オロの両腿を右手で抱え込んで、アリサを見下ろした。 「このことは秘密にしてあげるから、あなたも誰にも言ってはだめよ」 「は……はい」  アリサは泣きそうな顔で頷く。 「私が実験室に戻しておくわね」  部屋を出たところで先生がかけた声に、アリサは俯いたまま反応しなかった。先生は肩に担いだオロをちらりと見る。 『かわいい子。アリサ、私が代わりを務めてあげる……』  先生は口の中でつぶやき、空いていた左手でオロの身体をするりと撫でおろすと、光る回廊へ高慢と生気をみなぎらせた足取りで踏み出して行った。                    終わり
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