世界からフェードアウトゥ!

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世界からフェードアウトゥ!

 三月下旬。  ようやくあたたかくなり一部地方では桜が咲き始め、屋上にも少数ではあるが休憩に一服しに出はじめた時期。  この日、まだまだ忙しく社内がバタバタとしているなか、集中力が切れ一服するだけと仕事から逃げて屋上へ出る同僚たちの後ろにそっと紛れ、上司に気づかれずに俺も仕事から抜け出していた。  屋上の扉を開けると風がびゅうと音を立てながら扉の間から吹き抜けてきた。まだ少し肌寒いと思いつつも少し目がさえたような気もした。  屋上には俺以外に6人程居て、それぞれ仲のいい奴らと会話をしながら煙草を吹かしていた。  俺が紛れ込んだ同僚のグループはそれほど仲のいい奴らでもなかったため、一人は慣れ空いていた正面側の柵に凭れかかり、胸ポケットから煙草とライターを取り出し火をつけた。まずは大きく吸い込み溜息と一緒にゆっくりと吐き出す。 (やっとひと段落ついたな・・・・・。)  ここ最近の忙しさを振り返り、しみじみと思った。それはもうブラックじゃないかと思うほどにこき使われた。  まあ、これをあまり苦に感じていない自分がいるので特に文句はないのだが。  ここの仕事は大変でも、やりがいのある仕事なのだ。     
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