夢見ガチノ白昼夢

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 目覚めたら、目の前に僕がいた。  目の前の僕はベッドの上で仰向けになり、静かに眠っている。ベージュのボーダーの掛布団は、まるでそこにマネキンが横たわっているかのように、乱れ一つない。  これは夢なのか? ぼんやりとした意識の中で思った。目の前に両手を掲げてみる。確かに僕の手だ。けれども、向こう側が透けてみえる。色彩はあるが半透明だ。ベッドの上の僕には何の代わりもない。ははぁ、これは幽体離脱というやつか。そういえば、最近仕事が忙しくて残業続きだったせいで、疲れ切っていた。これは疲れた脳が見せている幻覚なのだ。僕はそう思った。  ふよふよと空中を漂っている風船のような気持ちで、僕は自分の部屋を見渡した。1DKの部屋にはこの4月に越して来たばかりだ。寝室の窓、カーテンの隙間から朝日が差し込んでいる。比較的、部屋には物は置かない。家具は全て茶色を基調としたアースカラーだ。フローリングの床には塵一つを落ちていない。徹底した日常管理が僕の趣味だ。  ベッドサイドに置かれたデジタル式の目覚まし時計は6:57を示していた。アラームは常に7:00にセットしていたが、いつも音が鳴る2分前には、自然と目が覚めていた。
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