夢見ガチノ白昼夢

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 はて、休日に気さくに連絡をくれる友人が、僕にはいただろうか? 入社してからは仕事が生きがいで、気付けば友人も恋人も僕から離れていった。寂しいとは思わなかった。僕は孤独を楽しむ方法を知っている。一人の方が、自分のために自由に時間を使えるし、気楽でいい。一体誰からの着信なのか確認する間もなく、彼は携帯電話を握りしめ、寝室へと向かった。暫くして、Tシャツにジーンズとラフな格好に着替え、洗面台の前で香水を振り掛けると、部屋を後にした。  リビングの窓から通りを覗き込むと、丁度、エントランスから彼が現れた。通りを右に進む。どうやら駅の方へ向かうみたいだ。僕は窓を通り抜け、僕の体を追った。  彼は、改札を通って、電車に飛び乗った。どうやら都心に向かうらしい。扉付近を陣取ると、手すりに寄り掛かって、再び携帯電話を覗き込んでいた。彼の後ろに回って画面を覗き込むと、インターネットニュースを興味なさそうな表情でスクロールしていた。  この意識を持たない伽藍洞が、一体誰に会いに行くというのか。
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