夢見ガチノ白昼夢

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 そのうち僕は僕自身の存在が偽りなのではないか? と考え始めた。今ここに存在する僕は一体何者なんだろうと。けれども、昨日以前の記憶はしっかりと頭の中に思い描くことが出来るのだ。仕事だけの平凡な毎日ではあるが……。    暫くすると、建物内からもう一人の僕が出て来た。長編映画丸々一本分、ずいぶん長い間が考え込んでいたようだ。新宿駅前で彼女と別れると、今度はJR・山の手線に乗り込み、僕は渋谷に向かった。  嫌な予感がした。待ち合わせ場所であろうハチ公前には、自分の母親位の歳の女が、僕を待っていたのだ。  女は僕を見つけると、真っ赤に塗りたくった唇が裂けそうな程に笑みを浮かべた。たるんだボディラインを無理矢理矯正するようなタイトなワンピースを着て、ざっくりと開いた胸元は体の贅肉を持ち上げて作っただろう豊満な胸を強調していた。  僕は相変わらず無表情で、たわいもない会話の切れ端から感情は読み取れなかった。先程の女と同様に、この年増も、そうするのが当然のように、僕の腕を取った。  公園通りを人の流れに乗って歩き、百貨店の最上フロアの中華料理店に入った。
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