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ふと、何かが聞こえた気がした。
時計を見ればもうじき深夜の1時を迎えようとしている。
あたりは静まり返っているのを確認すると、俺は箸を止めた。
「……気のせいか?」
そう呟いて首をかしげる。
再び箸を夕飯のおかずへと伸ばした。
その時だ。愛犬が、重々しい声音で吠え始める。
やめろと言っても全く聞く耳を持たない。
なんなんだ、そうため息を吐いた時だ。
『ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!』
どこか、壁を叩きつける……いや、殴りつけているような音が一定のリズムで聞こえてくる。
しかもそれは、少しずつ近づいてきていた。
「……?こんな夜中に、なんだ……?」
この時俺は、誰か酔っ払ってるんだろうと思った。
そして、不意に思い出す。
そういえば、ごみ捨て場に出し忘れたゴミ袋があったっけ。
ちょうど夕飯も食べ終えた頃合で、俺はそのゴミ袋を持って家の外に出た。
すると、やっぱりだ。
やっぱり、聞こえるんだ。ドンドンと壁を殴り続けるような音が。
ごみ捨て場について、扉を開けて……ゴミ袋を放り投げてまた扉を閉める。
その間も、殴りつけているような音は聞こえ続けていた。
用も終え、家に戻ろうとアパートの階段を登っていたその時だ。
俺は一つの疑問にぶちあたる。
ドアノブを握る手がじんわりと汗ばむのがわかる。
「……あれ?そういえば……」
この音、家の中で聞いてた時と聞こえ方が同じゃないか……?
普通、音量とか、変わるよな……?
パタン、と扉がしまる。
すると、再び静寂が訪れた。
「ナグルオト」終
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