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隼人のお母さんにカレーを分けてもらって、隼人の家から徒歩5分のアパートに帰る。ボロアパートの通路の電気はきれかけていて、ちかちか、と点滅していた。点滅する電気に蛾が集まる。
ぼくの部屋の前に女の子が座っていた。サトミンだ。ぼくの帰りを待っていたんだろう。彼女は顔を上げると、ぼくを睨みつけた。顔は幼いのに、睨むと迫力がある。サトミンは立ち上がり、怒鳴った。
「光太郎、なんで無視するの? もうわたしとは別れるの!?」
「別れるよ。君からそう言ったんだ」
「本気じゃなかったもん……ただヤキモチやいて欲しかったの」
サトミンはいつも理由のない不安を抱えていて、よくぼくの愛情を試した。
ぼくにわかるように他の男と仲良くしたり、別れると言ってみたり、そういうやつだ。最初は彼女の思惑通りに振り回されたけれど、そのうちサトミンの幼稚な恋の駆け引きがうっとうしくなった。
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