11月11日

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11月11日

 女から誕生日を訊かれた。ここで嘘をつく必要もないと「11月11日」と答えた。「ポッキーの日ね」と返ってきた。あのお菓子のポッキーのことかと思った後に、数字とポッキーの形が似ているせいだと結論を出した。  会話は億劫だ。  特に、女と交わすと大概がくだらない内容にすり替わっていく。 「もうすぐだから、当日にお祝いしたい」  一人の女と、二度三度と会うのは避けたい。ここ数年は、特定で特別な女はつくらないことにしている。 「仕事だから、無理かな」  僕にしてみれば、この女との関わりの大方が、さっき終わった。こちらには、声をかけた時点からはっきりと目的があり、それはすでに達成された。  バーで会ったばかりの男相手に、簡単に体を開く。  その愚かさは、一生治ることはない。これから先何度となく繰り返すはずだ。僕に飽きれば他の男の誘いに乗り、必ず裏切りを働く。  少し前まで、誘いを断ってくれる女はいないのかと思っていた。  僕は受け入れられる度に冷えていった。  僕を簡単には受け入れない。僕を決して裏切らない。そんな女はいないのだろうかと、最近ではもう期待を抱けなくなった。 「まあ、いいや。今日は楽しかった。僕は帰るけど、君は好きな時間までゆっくりしたらいいよ。支払いは済ませておくね」 「えっ、もう帰るの? 連絡先教えて」  僕は、衣服を身に着けていく。 「運命を信じているんだ。また会えたら、その時に教える。本当の名前もね」  わざわざ一万円近くタクシー代を払って来た都市で偶然会った女と、再会する確率はどれほどか知らない。また会えたらよほど縁があるとみて、名前と連絡先くらい教えても構わない。ただ、僕の方は顔を覚えていないから、声をかけてもらわなければ気づけはしない。
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