Bouquets of Irises

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 と、そこで大切な作業を思い出す。  私は慌ててノートパソコンを閉じ、デスクの足元に置いておいた黒板を机の上に置く。その後、デスクの引き出しから新品のチョークを取り出し、指でしっかりと握った。  オーソドックスなブレンドコーヒー二五〇円。黒板にチョークで文字を書き、円の後に波線を加える。また、“各種コーヒー豆ご用意しております!”と付け足しておく。  コーヒー豆の種類も四五種類とかなりの数を用意し、幅広い所得層にも慕われるよう考えた。コーヒーの好きな人は自分のオリジナルブレンドを作れるように“お客様オリジナルブレンド三〇〇円~”と黒板に書く。この試みは案外面白いんじゃないだろうか?と、家族が喜んでくれればいいなと笑みを浮かべる。  また、ケーキセットを五〇〇円にし、コーヒーと紅茶を選べるようにした。  この時のコーヒーはブレンドコーヒーよりも美味しい豆のブレンドに変えている。この味の違いもわかってくれると嬉しいんだけど……。そんなことを考えながらケーキの絵も描く……が、どう見てもケーキに見えなかったので黒板消しで消す。  絵心ってどうやったら身につけられるのか……。  完成した黒板をイーゼルの上に置いて店の前に出す。私は晴天を見上げ、店の入口の“CLOSE”を“OPEN”に反転させる。  時は日曜休日、朝の七時半。早すぎる気もするが逸る気持ちも合わさって私は店を開けた。  店に戻り、カウンターの奥入って、私はカウンターそばに置いた自分用の折り畳み椅子に腰掛ける。  最初の客はどんな客だろう?  身内と友人とバイト先の仲間にしか伝えておらず、開店の大花もバイト先の店長からのみというこのお店。一体どんなモノ好きが入ってくるのか楽しみだ。そして、できればその人が初めての固定客になってくれればいいな。  もちろん、お父さんにもお母さんにも来て欲しい。いや、あの二人はちゃんと来てくれるだろう。それに全員が揃うことはないが、弟妹たちも集めて家族であの部屋を使ってみたいな。せっかく広めにとった部屋だ。満杯の状態に一度はしてみたい。なんて、甘い考えのまま私は妄想と想像を繰り返す。
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