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5 味は異なもの拘るもの(つづき)
「随分と話が弾んでたみたいでしたね」
「ええ。なんだか雪村さんって不思議な方で、
いつの間にか、昔から知っていた人のような感じがしてしまって。
実は……、僕、自分の素性まで話してしまって……」
こんな事、まずない事なんですけど。
少し照れとバツの悪さをない交ぜにして、「マダム」の顔が歪む。
「でも彼は、大丈夫じゃないですか。
あっ、別に俺も、すごい知り合いってわけじゃないですけど……」
だが雪村という男は、そんな風に感じさせてくれる男だ。
そして「マダム」も、やはり頷き返した。
「ええ。あんな仕事していながら、勘はあまり信じてないんですが、
それでも、僕なりに直感的にそう思いました」
なんとなく納得し合った俺たちの上に、傾いた日差しの木漏れ日が
柔らかに揺れる。
そして、俺に向いていた彼の視線が、ゆるりと正面に戻っていくのを見て
呟いた。
「エールですか?」
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