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ところが、そんな夢うつつもダイニングに戻った途端に霧散した。 なんと、洗顔を済ませた俺を待っていたのは、ひどく上機嫌の母。 「あっ、おはよう」 たぶん、常連客の誰かが来ているのだろう。 淡い煎茶の香りを漂わせながら、あまりに爽やかな母の挨拶に 俺の脳みそが一気に覚醒する。 危ない……。 そして、この俺の警戒信号は、次の瞬間けたたましく警戒音を鳴らし始めた。 「お昼は、二人で適当に済ませるから。 でもケイさんが、今夜は、ちらし寿司がいいって」 で? その続きで、俺に何させようってわけ?  しかし、 「はい、これ夕飯代。お釣りは、お駄賃にあげるから」 へっ……?  あまりの衝撃だった。 それだけに、手の上に置かれた二枚の千円札に目を落とし、 俺の中の警戒赤ランプも騒がしい警戒信号もパッと姿を消す。
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