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駅からウチへ向かう道すがら、一軒、古い喫茶店がある。 名前は、「()ボン」。 いつからここにあるのかは、定かでない。 しかし、少なくとも俺が記憶というものを留められるようになってからは、 ずっとここにある。 半球型を更に半分に割ったような緑色のビニール屋根。 その下には、焼印で店名が刻印された小さな木製の看板。 扉は、子供だった俺の手ではビクともしなかった程、ちょっと重ため。 そしてそれには、俺の耳には、すっかりお馴染みのウチと同じベルが 付いている。 どれも、俺の記憶の中では一つも変わっていない。 ただ、当初の経営者から代替わりして、今は三十代の夫婦が営んでいる。
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