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「でも社会に出たら、こういうなんか無意味な付き合いっていうかが
日常になるのかなって思うと、自分は付いていけるのかなんて思ったり
したんですよね」
「そうですねぇ……」
ほんのわずか、「マダム」の声が低くなったような気がした。
そしてそれに続いた短い沈黙が、俺たちの背後を散歩する人の姿と共に
ゆっくり抜けていく。
それを追うように「マダム」の静かな声が、
再び視線を真っ直ぐオレンジ屋根に向けてのっそりと言った。
「でも、未来って自分だけが選べるものだと思うんですよ」
彼の横顔は、穏やかだった。
だが、その穏やかさに隠れた何かが伝わってくる。
「僕もね、社会経験を誰かに語れるほど豊かなわけではないですが、
様々な立場の様々な人々とある接点を軸にして向き合ってきて思うことは、
それなんです」
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