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だが、そんな俺を訝るでもなく、逆に「マダム」は、少し顔を赤らめ
新作ではないがクリームパンがお勧めだと言ってくる。
確かに。
内心うなずいた俺の脳が、あの上品な甘さを反芻した。
「あれ、あそこの看板商品になりそうですよね」
そしてウチの両親も、あの“スピーカー”ですら珍しくまともな情報として
あのパンを薦めたことを口にする。
「そうですか。そうなるといいですね」
はにかみの後ろ側でちょっと嬉しそうに微笑む「マダム」の横で、
俺は、ゆっくり立ち上がった。
「じゃあ、また」
はい。
頷いた「マダム」と別れ、愛車を再び走らせ始めた俺の頭に
あのコロンと丸い姿がバニラの香りと共に浮かんでいた。
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