俺は今、見知らぬ女に壁ドンされている

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「やったな、イマイチ男!」 絶世の美女が悔しそうに叫び、じゃばっと水をかけ返してくる。 「イマイチとはなんだ、失礼な!」 「自分で言ってたんじゃないの!」 「他人から言われたら腹立つんだよ!」 それからは、雪合戦ならぬ水合戦。 二人とも全身びしょびしょになるまで、水を無駄遣いし続けた。 酔っ払いってほんと手に負えないな……。 一時間近くも馬鹿をやっていただろうか。 俺たちは同時に、はっと我に帰った。 傍らに怪訝な顔で立ち、俺たちの動向を眺めているお巡りさんの姿に気がついたからだ。 「ちょっとちょっと、こんな時間にこんなところで何してんの、お兄さん達……」 お巡りさんの不審そうな目に見つめられて、女が愛想笑いを浮かべた。 「あはっ、えーと………水浴びです!」 俺はすかさず補足を入れる。 「このバカ女にゲロかけられて!」 女がむっとした顔で俺をにらんだ。 「なによ、先に水かけたのはそっちでしょ!?」 お巡りさんは呆れ顔でため息をつき、 「いい大人なんだから、たいがいにしときなさいよ」 とありがたい忠告を残して去って行った。 後に残された俺たちは顔を見合わせる。 「………ほんと、何やってんだろ俺たち」 「こんな夜中にびしょ濡れになって」 「我に帰ると恥ずかしすぎる………」 「お酒って怖いわねぇ」
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