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熱に浮かされたように潤んだ瞳が、俺を囚えて離さない。
どくん、と胸が鳴った。
ごくん、と喉も鳴った。
……この美女はきっと、俺に一目惚れをしたに違いない。
真夜中、がらがらの終電。
気怠げに背もたれに身を預け、どこか憂いのある表情を浮かべた男。
うん、なかなかドラマチックじゃないか。
美女はきっと、こう見えて母性本能の強いタイプで、寂しげな雰囲気をまとった俺に心を奪われたのだ。
きっと外見だけじゃなく心も綺麗で、家庭的で料理上手で、男を優しく包み込んでくれるような最高の女性なのだ。
こんな女に惚れられるなんて、俺の人生も、捨てたもんじゃない。
思わずにやりと笑ったその時。
美女の肉感的な唇が、うっすらと開いた。
真珠のように白く輝く小粒の歯が、赤い唇の間から覗く。
俺に見惚れるようにとろんとした瞳が、まっすぐ見つめてくる。
――もしかして、愛の告白!?
いきなりかぁ、積極的だな!
いやしかし、運命の出会いって本当にあるんだな。
まさに、ビビッとくるってやつだぜ!
それにしても、こんな美女に惚れられるとは。
俺って、自分では分かってなかったけど、なかなか魅力ある男なんだな。
俺はこれから絶世の美女と幸福な家庭を築くことになるだろう。
俺を振ったことを後悔するがいい、志織!
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