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俺は仕方なく、目の前の公園に足を踏み入れた。もちろん、ゲロ女を連れてだ。
女はふらふらと俺について来る。
古びた滑り台。錆びたブランコ。
夜の公園は、街灯さえ不気味に見える。
しかし俺はゲロ臭さに耐えきれず、迷いなく公園の中を突っ切って、水飲み場で服を洗うことにした。
「何すんの?? 水のむの??」
女がぐらぐら揺れながら俺の横に立つ。
「お前のゲロを洗うんだよっ!」
俺は女をがみがみと怒鳴りつけ、冷たい水で服を洗い始めた。
「くっそ、きったねえな………。何が悲しくて、見ず知らずの他人のゲロなんか洗わなきゃなんねえんだか………」
ぶつくさ愚痴りながら洗っていると、女が突然、俺に跳び蹴りを食らわせてきた。
「いった! なにすんだお前!」
「ゲロくらいでごちゃごちゃうるさい! ケツの穴の小っさい男ね!」
「はぁ?っ!?」
恩人に対するものとは思えない、傍若無人な口のききかた。
どうやら、本性が出てきたらしい。
それならこっちだって遠慮はしねえぞ!
「おい、それ、迷惑かけた相手に言う言葉かよ!?」
「なーにが迷惑かけた、よ。大げさね! ゲロかけただけでしょ!?」
「ゲロ=迷惑だろうが!」
「ゲロはゲロでしょうが!」
「ゲロゲロ言いやがって、下品だな! 信じらんねえ、外見サギだ!」
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