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「もしもし、柿原です」
「どうも、主村ですけれども」
「ああ、お世話になっております、高也です。いかがなさいましたか? 今からまた学校へバスを折り返すつもりなので、あまり時間は取れませんが」
「あなたもご存知の通り、うちの小夜が明日、半らの儀式をあげるの」
「ああ……先方は村の外から来られるのでしたね。この度はおめでたいことで……」
「でもね、あの子ったら、奈良井村の匠という小僧にうつつを抜かしているそうなの」
「……」
「その小僧のせいで、小夜は先方との結婚を拒んでいるわ。ねえ、そいつが邪魔なの。主村の今後の繁栄に支障が出るわ。だから、そいつを――殺して」
「……えっ……」
「あんた、匠ってやつと面識あるんでしょう。前に小夜が話していたわ。匠というやつがバス乗り場まで送ってくれているって。バスの運転手をしているあんたなら、怪しまれずに近づけるわ。ねえ、殺してちょうだい」
「そんな……」
「私の言うことが聞けないの? あんたが都会の学校へ行くのに、うちがどれだけ資金援助してあげたか、忘れたわけじゃないわよね」
「……!」
「従わないなら、親御さんにも伝えて、全て返済してもらってもいいのよ。もちろん、私が命じたことを他言した場合も……わかっているわね?」
「……」
「返事をなさい」
「……はい」
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