十歳でさらって

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*** 「もしもし、柿原です」 「どうも、主村ですけれども」 「ああ、お世話になっております、高也です。いかがなさいましたか? 今からまた学校へバスを折り返すつもりなので、あまり時間は取れませんが」 「あなたもご存知の通り、うちの小夜が明日、半らの儀式をあげるの」 「ああ……先方は村の外から来られるのでしたね。この度はおめでたいことで……」 「でもね、あの子ったら、奈良井村の匠という小僧にうつつを抜かしているそうなの」 「……」 「その小僧のせいで、小夜は先方との結婚を拒んでいるわ。ねえ、そいつが邪魔なの。主村の今後の繁栄に支障が出るわ。だから、そいつを――殺して」 「……えっ……」 「あんた、匠ってやつと面識あるんでしょう。前に小夜が話していたわ。匠というやつがバス乗り場まで送ってくれているって。バスの運転手をしているあんたなら、怪しまれずに近づけるわ。ねえ、殺してちょうだい」 「そんな……」 「私の言うことが聞けないの? あんたが都会の学校へ行くのに、うちがどれだけ資金援助してあげたか、忘れたわけじゃないわよね」 「……!」 「従わないなら、親御さんにも伝えて、全て返済してもらってもいいのよ。もちろん、私が命じたことを他言した場合も……わかっているわね?」 「……」 「返事をなさい」 「……はい」
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