十歳でさらって

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「……だから僕は、二十歳になったらトラックの運転手になりたいです」  一拍置いて、さざ波のような拍手が木造の小さな教室を満たした。小夜の前の席の男子は、照れたように周りを見まわし、席につく。  波がおさまると、先生が口を開いた。 「はい、ありがとう。トラックの運転手、かっこいいね。いつか先生も助手席に乗せて欲しいな」  六時間目、道徳。黒板には、大きく「二分の一成人式」と書かれている。奇しくもこの日は、小夜の誕生日の二日前だった。 「では次、主村さん、発表してください」 「はい」  小夜は細い声で答えると、原稿用紙を手に立ち上がった。切りそろえられた黒い前髪が、色白の顔に影を落としている。 「『私の夢』、主村小夜。私は、二十歳になったら――」
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