6人が本棚に入れています
本棚に追加
「……だから僕は、二十歳になったらトラックの運転手になりたいです」
一拍置いて、さざ波のような拍手が木造の小さな教室を満たした。小夜の前の席の男子は、照れたように周りを見まわし、席につく。
波がおさまると、先生が口を開いた。
「はい、ありがとう。トラックの運転手、かっこいいね。いつか先生も助手席に乗せて欲しいな」
六時間目、道徳。黒板には、大きく「二分の一成人式」と書かれている。奇しくもこの日は、小夜の誕生日の二日前だった。
「では次、主村さん、発表してください」
「はい」
小夜は細い声で答えると、原稿用紙を手に立ち上がった。切りそろえられた黒い前髪が、色白の顔に影を落としている。
「『私の夢』、主村小夜。私は、二十歳になったら――」
最初のコメントを投稿しよう!