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明るさを失った空が、1日の終わりを告げている。
祈はベランダからそんな空を見上げていた。
すぐに夜がやってくる。
ここは闇に包まれる。
安心できるはずの闇を今日は少し嫌だと思った。
まだもう少し、空が明るくあってくれることを願った。
背後でドアの開く音がした。
振り向いたそこに立った真は、穏やかな笑顔で同じように空を見上げている。
「そろそろ中で話そうよ」
ベランダで話す時のお決まりのセリフ。
ほほ笑んだ祈は頷き、彼に続いてリビングのソファに座る。
長年、自分を苦しめて来た言葉が、ミコちゃんを救ったと知ったことで、祈の認識は「自分を苦しめて来た言葉」から「ミコちゃんを救った言葉」に塗り替えられた。
今まで頭にこびりついていたのは誰かのためだったと思えたら、もうその言葉に捉われるのはやめようと言う気になれた。
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