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名前、聞きそびれちゃったなぁ。
席に座って黒板を眺めながら後悔していた。水曜日は日本史。
「あやの…?」
「あ、景」
「どったの? 考えこんでるみたいだけど」
「ううん。なんでもない」
景はわたしの隣にカバンを置いた。授業に集中するために、隣には座らない。
カバンから授業に必要なものをごそごそと出してゆく。ペンケース、テキスト、ノート…と置いて、手が止まった。
「? あやの、あれ、なんだろ?」
前の席の下の方を指さして言う
「なぁに?」
景の視線に合わせるために体を傾ける。
白い紙が落ちていた。
もしかして…?
立ち上がり、前の席に回り込んだ。おもむろに拾い上げる。
「図書カード?」
「うん」
「ちょっと見せて?」
「ダメ」
「いいじゃん。見せてよ」
「ダメだよ。見ちゃダメなの」
「んー。そこまで文乃がムキになるとは…分かった、もう言わない。きっと理由があるんでしょ?」
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