七五三木文乃ーしめぎあやのー

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◆  名前、聞きそびれちゃったなぁ。  席に座って黒板を眺めながら後悔していた。水曜日は日本史。  「あやの…?」  「あ、景」  「どったの? 考えこんでるみたいだけど」  「ううん。なんでもない」  景はわたしの隣にカバンを置いた。授業に集中するために、隣には座らない。  カバンから授業に必要なものをごそごそと出してゆく。ペンケース、テキスト、ノート…と置いて、手が止まった。  「? あやの、あれ、なんだろ?」  前の席の下の方を指さして言う  「なぁに?」  景の視線に合わせるために体を傾ける。  白い紙が落ちていた。  もしかして…?  立ち上がり、前の席に回り込んだ。おもむろに拾い上げる。  「図書カード?」  「うん」  「ちょっと見せて?」  「ダメ」  「いいじゃん。見せてよ」  「ダメだよ。見ちゃダメなの」  「んー。そこまで文乃がムキになるとは…分かった、もう言わない。きっと理由があるんでしょ?」
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