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◆
木曜日の昼休み。
胸の前に体育着を抱いて更衣室に向かって歩いていた。
ふと。廊下のポスターに目が止まった。
東陵高校文化祭…澄流祭。
なんて読むんだろう。
「あ・や・のっ」
「あ、景」
「なに見てんの? …ん?」
景が肩越しに覗き込む。
「ああ、チョウリュウサイか。東陵の文化祭だよ。三年に一回の」
「行って…みようかな」
「えー、つまんないよ。 模擬店禁止だし」
「でも…」
「ホラ、行くよ! 早くしないと更衣室いっぱいになちゃうよ? このガッコ生徒の割に更衣室狭いんだから。次体育館で、だって」
「…うん」
景の後について歩き出して、日付を見直す。
十一月第二の土日。今週だ…
―あの人に逢えるかな。
わたしは自宅の机の上に預かったままにしてあるカードを思い出した。
返さなくちゃ…
でも、これで終わりなんて…
その時ふとある考えが浮かんだ。
ダメ。それはやってはいけないこと。
振り払うように頭を振る。耳のあたりで髪がささやかな音を響かせる。
でも…
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