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間幕 その日の図書館
あたしはカウンター当番の美帆の邪魔をしながら、隣で英語の構文帖をやっていた。
つまんないなぁ…
ふと眼をあげる。目の前に貸し出しカードを入れておく箱があった。
あたしには腕をぐーっと前に突き出して伸びをした。
「でもさ、バカだよね」
「誰がですか」
美帆も読んでいる文庫から目を離さずに返してきた。『海がきこえる』とある。
「んークラスの男ども
貸出カードからさ、恋が始まるって話しあったでしょ」
「そんな話もありましたね。図書館から借りた本の貸出カードに同じ名前があって…って話ですよね」
「あんな恋したーいとか叫んでんの」
「そうですか。じゃあ貸出冊数が伸びていいですね」
「そうなんだけど、さ」
「? どうかしたんですか?」
「…美帆はどう想う?」
「物語としてはロマンティックでいいと思います。ですけど、現実にはご遠慮したいですね」
ぺらりとページをめくる音がする。
「そうだよねー」
あたしは自分の空色の貸出カードを取り出して見つめる。こっちは借りた本の書名だけだ。
ずいぶん本読んでるな。
東陵は新しいカードの度に色が変わる。
本からちらりと視線を挙げて、その色をみた美帆が呆れたように呟く。
「はるかさん…三枚目?」
「そだよ」
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