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星が見える火曜日の夜。駅のホームで電車を待っている。
後ろを市内の共学校の女の子たちの華やかな気配が通り過ぎてゆく。
「東陵? うーん…そうだね。ありゃあふつうの学校じゃないね」
作ったような難しい顔を景はしている。
「どういうことなの?」
「すっごい校則が厳しいんだ。スカートの長さとか、長い髪は縛らないといけないとか、そのゴムの色まで決まってるとか」
「ゴムの色って?」
「そ。黒か紺か茶色。それ以外はダメ」
「そうなの?」
自分の髪の毛を見る。
「わたし黒以外持ってないよ?」
「あのねぇ、文乃…」景はため息混じりに軽く首を振ってつぶやいた。
「もっとカラフルなの、ピンクとか、水色とか、みんなつけてるでしょ」
「そう…かな?」
景はわざとらしく大きなため息をついて
「もっと周り見ないと。文乃ぼけっとしてるから」
「そんなこと…ない、と想う…」
「ま、極めつけは『男女の交際は常に清く正しくあること』って校則が今でもばっちり書いてあることだけど」
「景ちゃん詳しいね」
「ま、うちのねーちゃんが東陵だったって話だけど」
「どこにあるの?」
景がきょとんとした。
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