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「そうか、文乃って五年生だったっけ」
「うん」
この言葉を聞くと少し淋しくなる。
五年生…か。
朔女で五年生といえば高等部二年生のことをさす。
朔風女子学園には中等部と高等部がある。ほとんどの生徒は景みたいに高等部から入学する。といっても、中等部から進学しないと入学できないほど入りにくいわけでもない。だから、中等部はあまりレベルが高くない。
入学する生徒のほとんどの母親が中等部の出身だった。まわりはそういう生徒ばかりで居心地は良かった。
そういう中等部から来る生徒を高等部から入学した生徒は、からかいの意味も含んで、四年生、五年 生、六年生と呼ぶ。
小学生と同じの意味が入っている。
成長してないの意味も。
世間知らずの意味も。
「ああ、ごめん」
「ううん、気にしてない」
ホームの白線に視線を落とした。
私、嘘ついてる。
景、ごめん。
あやまるのは多分わたしの方だよ。
ほんとうは気にしてる。
こどもだって。
「でもさ。どうしたの―?文乃が他のガッコのこと気にするなんて」
「べつに。ちょっと気になっただけ」
「ふうん」
「なにか?」
「さてはオトコだな?」
「…」
小さく息をつく。
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