ツンデレカノジョ。

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 俺は怯まずに話を切り出す。 「……なに?」 「俺はさ、もうそろそろお前たちが一人に戻ってもいいと思うんだ。いや、戻るべきだ」 「えっ、なんでっ?」  突然の彼女の動揺が見て取れる。 「お前たちが二人になって色々気づいたんだ。いや、教えてもらった。だから、俺にはもう――必要ない」 「――っ」  そのとき、一筋の滴が彼女の頬を伝った。  その顔に表情はなく、ただ目を見開いて静かに涙を流す。  彼女はそのまま取り乱すことなく、ぽつりと呟いた。 「そっか……そうだよね。やっぱ、あたしなんかいらないよね……」 「違うよ」 「何が違うのよ……、あんたはあたしよりあの子がいいって、そう言ってるんでしょ」  違うよ、全然違う。そんなことない。 「違うって」 「違わない」 「違うんだよ」 「なにも違わないじゃない!」  彼女は急に声を荒げた。 「いつでも本音を言ってくれるあの子がいるから、あたしはもう必要ないって、そういうことでしょ?」  違う、俺の言いたかったことはそんなことじゃない。 「そうじゃないんだよ」 「だったらはっきりとそういえばいいじゃない!」 「だから違うんだって」 「何が違うのよ!」 「だから、俺は――」 「いやっ、やっぱり聞きたくない!」  彼女の心はもう限界だった。  取り乱して、感情は全て表に出ている。  不安と恐怖で心はズタズタだ。  でも、だからこそ、今なら彼女の本音が聞き出せるかもしれない。  危険な賭けだ。それでも、俺は彼女から直接本音が聞きたい。 「いいから聞いてくれ」 「いやっ!」
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