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「聞けってっ」
「やめて、それ以上言わないで! でないと、あたし……」
「ったくもう、仕方ないな」
全く聞く耳を持たない彼女。
そんな彼女を、俺は強引に抱き寄せた。
「えっ……な、に……?」
彼女の動きが止まる。
俺はすかさず言葉を紡ぐ。
彼女の不安を取り除くのは今しかない。
「俺は――どんなお前も好きだ。何があっても、それは変わらないから」
そういって抱きしめる力を強める。
「俺にお前は二人も必要ない。だってそれはもともと、一人のお前にあったものだ。二人になんかならなくても、ちゃんと気持ちは伝わる。あとは言葉にしてくれれば、お互い通じ合えるはずだから」
まだまだいっぱい伝えたいことはある。でもとりあえずはこんなとこだろう。
全部言うと、時間がすごくかかりそうだから。
「だから安心して。俺はお前が、大好きだから」
やっと言えた。こんなにも直球に気持ちを伝えたのは初めてかもしれない。
普段なら恥ずかしくて言えないけど、今なら気にせず言える。
あとは、彼女の本音を聞くだけだ。
少しの沈黙の後に、俺は抱擁を解いた。
「どうかな? ちゃんと伝わった?」
彼女は伏せていた目を見開いて俺を見つめる。
「……うん、伝わったよ」
少し照れたように微笑む。
「あのね、あたしもっ……あたしもあんたのこと、――大好きだよ」
彼女は、今までで一番かもしれない笑顔を向ける。
「それと……」
急に彼女が顔を寄せる。そのまま――
「――んっ」
俺の唇に、キスをした。
それから、いたずらな笑みを浮かべてこう言う。
「あたしの気持ち、伝わった?」
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