ツンデレカノジョ。

14/16
前へ
/16ページ
次へ
 その後、俺は足早に教室に向かった。  早くしないと、もしかしたらもういなくなってしまうかもしれないから。  彼女は、まだ残っていた。 「あ、どうだった? ちゃんと伝えられた?」  教室で一人、窓の外を眺めていた彼女が俺に気付いて顔を向ける。 「うん、伝えたよ」 「そっか、じゃあ、あたしはそろそろお役御免だね」  冗談っぽく笑う。 「なんか、ちょっと寂しくなるな」 「もう、そんなこと言ってるとまたあの子が不安になっちゃうよ」 「あはは、そうだね。ごめん」  こっちの彼女とは、おそらくもうお別れ。  名残惜しくはあるけど、それは仕方のないことだ。 「別に、お別れっていってもあたしが全部いなくなるわけじゃない。ただもとのあたしに戻るだけ。あたしはずっと君そばにいるよ、あの子と一緒に」 「うん。ありがとう。なんかちょっとだけ新鮮だったよ」 「ううん、あたしも思ったこといっぱい言えて嬉しかった」  彼女が嬉しそうに微笑んだ。 「じゃあ、最後にあたしから……」  そう言って彼女は俺に近づくと―― 「――んっ」  そっと俺の唇に、キスをした。 「……へっ?」  急な出来事で反応できずに固まる。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加