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しっかし、どうしてこうなった。
「さっきから何ぼさっとしてるのよ。置いてくわよ」
「どうしたの? 具合でも悪い?」
「いや、平気だよ。行こうか」
同じ顔で性格が全然違うのを見ると、まるで双子みたいだ。
もともとは二人で一人だった。どちらも俺の好きな彼女だ。
こうして彼女の表情を二つ同時に見れるのはいいが、いろいろと大変なこともある。
まず、なぜか二人は仲がそんなによくない。
嘘と本音のような二人だからこそお互いよく通じ合っている、はずなんだけど……。
「あんたねぇ、ちょっとべたべたし過ぎよ。いい加減こいつから離れて」
「えー、なんで? いいじゃん別に。ね、いいよね?」
「あはは……」
デレ子が俺の右腕に自分の腕を絡めて抱き付く。
その様子を見たツン子がそれを止めようとする。
「見た目はあたしと一緒なんだからもっとあたしらしくしてよね」
「それだったらあたしも同じこと言えるよ~」
「ほら、二人ともケンカしないで」
俺は彼女たちをなだめる。これももう慣れた。
「別にそんなんじゃないわよ。ふんっ」
ツン子がそっぽを向く。
「そうそう。ツン子は私に嫉妬してるだけだもんね~」
デレ子がニヤニヤとツン子を見つめる。
「は、はぁ!?」
「ツン子もあたしみたいにイチャイチャしたいんでしょ」
「べっ、別に違うしっ! 全然そんなんじゃないし!」
「遠慮することないよ、付き合ってるんだから」
「い、いや、だからあたしは別にっ……」
ツン子が俺に目線を移した。ちょっと顔が赤い。
「えっと、こっちの手でよければ空いてるけど?」
そう言って俺は左手を差し出す。
「だから違うって言ってるでしょ。勘違いしないで……」
相変わらず今日もツンツンだ。
なんでだろう。少し寂しい。
もう少し、素直でもいいのにな。
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