ツンデレカノジョ。

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 昼休み。  中庭のベンチに三人で座ってお弁当を食べる。  真ん中に俺、その左右に彼女たちという並びだ。 「今日のお弁当どうかな? 二人で作ったんだけど、大丈夫?」 「うん、今日もおいしいよ。ありがとう」 「ううん。どういたしまして」  デレ子が優しく微笑む。 「ちなみにどれが一番おいしかった?」  不意にそんなことを言う。  そのタイミングでツン子の動きがぴたりと止まった。  俺は思ったことをそのままいった。 「えーっと、どれも美味しかったよ」 「じゃあじゃあ、どの味付けが一番好みだった?」  さらに質問を重ねるデレ子。 「うーん、しいていうなら……これかな?」  俺がそう答えると、デレ子が嬉しそうに声を上げた。 「あ、それあたしが作ったやつだ。やった、うれしいなぁ」  ツン子が僅かに反応した気がした。 「そうなんだ。でも、本当にどれもおいしいよ」 「うん、ありがと」  前まではあまり見れなかった彼女のデレが、今では毎日のように見れる。  なんだか嬉しい。だけど――、 「ツン子も、いつもお弁当ありがとう。すごく美味しいよ」 「……別に。二人分も三人分も作る手間は変わらないし」  そっけなく答えて、おかずを頬張るツン子。  前よりもツンの部分も多くなってしまった。  デレ子は本音を言ってくれるけど、ツン子は言ってくれない。  正直、本当の気持ちがわからない。  どうして彼女はこんなにもツンツンしているのだろう。  前まではそれが普通だった。だけど本音を言ってくれる彼女と言ってくれない彼女がいると、言ってくれない方にはどうしても不安を感じてしまう。  彼女は満足しているだろうか。俺のことを本当に好きなのだろうか。  前よりもいろいろな彼女の一面が知れたはずなのに、なぜだか前よりも彼女を遠く感じてしまうときがある。  嘘と本音、どっちが本当の彼女なんだろう。そんなことを、ときどき考えたりもする。
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