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研究所所長とチューリングテストチーム数名のスタッフに囲まれ、隣の部屋で騒ぐ女性型AIの声をスピーカー越しに聞いた坂田が呆気にとられていた。
「坂田君、君はあのAIに心当たりはないのかね?」
「さぁ……ないですねぇ。実家のアンドロイドは男性型ですし、それにもっと穏やかで上品です。あんな言葉使いの悪いAIなんて聞いた事ありませんよ」
「でも坂田君指名だし……テストの代金も坂田君に請求しろって、さっき言っていたよねぇ?」
「え!?確かにそう言っていましたけど、テスト代って僕が払うのですか……?」
「ははは、大丈夫だよ。ちゃんと経費で落とすから安心したまえ。それにしても変なAIだ。オーナー不明で登録情報ヒット無し。だけど坂田君の事は知っていると言うし謎だらけだな……うーん、とりあえずテストしてみてよ」
通常のチューリングテストは、AIと判定者がそれぞれ別の部屋でパソコンのチャットで行われる。
対面方式で行われないのは、視覚や聴覚からくる先入観を防ぐ為だ。
先程のように、AIが発する声を判定者に聞かせる事は普通はまずないのだが、常に丁寧な話し言葉でコミュニケーションをとる一般的なAIとは異質である事を情報共有する為の特別だったのだ。
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