第二章  許婚

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 陽子の中に身を沈めた後になって、初めて何かがおかしいと気付いた。  意識がやっと、正常に戻って来たのだ。  正親は腕に抱いている女が陽子ではない事に気が付いて、驚愕した。  見知らぬ女だ。それもまだ少女の身体を、彼は抱いている。  然も、少女は。彼の腕の中で、気を失っているのだ。  急いで身体を離して、少女を調べた正規はもっと愕然とした。  そう言う行為が初めての徴を、見た。  罪の意識に引き裂かれながら、慌てて少女を毛布に包みこんだ。  周りを見回して。そばに置かれているたたんだ自分の服を、急いで身に着けた。  少女を、心配そうに覗き込む。  目を開けた少女は、悲鳴も挙げなかったが、意識も正常では無かった。  茫然と毛布にくるまったままで、涙が開いた眼から流れ続けている。  正規は初めて、事の重大さを認識した。  初めて見る少女から、何とか名前と連絡先を聞き出したのは、それから一時間も後の事だった。  何時の間にか、夜が明けていた。  連絡先は、桐子の母親の携帯だった。  「来て貰いたい」、としか言えなかった。  ここが何処なのか。何故、自分が此処に居るのか。まるで何も分かっては居なかった。  「少女が桐子と言う名前で、もう直ぐ、両親が駆けつけて来る」、正規に解っているのはそれだけだ。  とにかく風呂を沸かして、桐子を洗ってやり、着替えを身に着けさせた。  それからまた毛布に包む。ソファーに寝かせると、両親の到着をただ待った。
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