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正規が桐子の左手を取って、指輪を嵌める。
そっと抱き寄せて、額に唇を押し当てた。軽く口づけをして、優しく抱き締める。
「そうだ。これで婚約者らしくなったぞ」、嬉しそうに微笑むと。桐子にお父さんと呼ばれる日が待ち遠しいよと言って、桐子をまるで父親のように抱き締めた
正智の言葉は嬉しいが、「指が重い」と桐子は思った。
家に指輪を持ち帰った桐子だったが、翌日に両親が慌てて指輪を持って現れた。
「お気持ちは嬉しいが、とても四方の家でお預かり出来る宝石では無いので、銀行の保管庫に戻して頂きたい」、両親の申し入れに、渋々銀行に戻した正智だったが。正規から代わりの宝石として、大粒のエメラルドをダイヤモンドで飾ったペンダントが贈られた。
まだ年若い桐子に「指輪はまだ早い」と、正規は思ったのだ。
いつか二十歳を迎えて大人の女らしくなったら、改めて指輪を送ろうと決めていたのだが。
桐子には言わなかった。
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