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邸に着くなり、抱き上げて寝室に運び込んだ。
ベッドの上に放り出し、重く伸し掛かる。
「正規」
「何故、こんな真似を・・・」
腕の中の桐子が呻いている。
桐子のどんな言葉も聞く気はないし、聞こえない。
熱く抱き締めた腕の中の桐子。衣服を剥ぎ取って裸にすると、自分も全てを脱ぎ捨てた。
「桐子」
何度も囁いて、深く抱き取った。
正規の愛の行為に震えて。
桐子は、「自分がもうわからない」と思った。ただ震える。
そして正規は、ずっと押し殺して来た、心の奥底に深く刻まれた桐子への想いを解き放った。子供なのに手を出してはいけないと、自分の気持ちを押さえ付けてきた。「あれはまだ子供だ」と、自分に言い聞かせて来た。
だがそんな欺瞞も、ココまでだ。
正規が、優しく桐子を愛の深みに連れていく。
愛に馴れていない桐子のぎこちなさが、彼には愛おしくて堪らない。
正規の逞しい身体に包まれて、初めて男の愛を自分から受け入れた。
夢中で愛の中を漂って、正規の腕の中で甘く呻いている自分が信じられない。
「この柔らかな細い身体で。あの夜、僕を温めてくれたのか」、心の中に温かい思いが溢れる。正親は自分の真実に気づいてしまった。
熱く激しく奪いつくす男の腕の中で、頼りなく漂って。ただ愛に搦め取られていく。そして陽子の気持ちも、なんとなく理解できた気がした。
男に愛されると言う事を、初めて知ったと思う。嬉しいけれど。でも恥かしい。
愛の後で、優しく身体を撫でられて、心が揺れた。女が好きな振りなんて、もう出来ない。正規の胸に頭を乗せて、身体に残る愛の余韻に揺られて漂いながら。
「忘れられなかった。貴方への想いは全て殺してしまうと誓ったのに」
独り言を呟き、涙を零す桐子。
「何故、僕を捨てようとするんだ」
聞かずには居られない。
「貴方に、アノ事故の様な出来事の責任を取らせ続けてはいけないって、ずっと前から知ってたわ。そんな事をしても、誰も幸せになんか為れない」
「貴方から、愛する自由を奪っているって知ってた」
閉じた目蓋から涙が零れ落ちて、正規の胸に降りそそぐ。
「陽子さんに言われるまでも無く、知ってたから・・・あの時はね、とうとう別れる時が来たんだって思ったの」
涙で濡れた桐子の心が絞り出した、それが真実の言葉だった。
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