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大学院生に為って司法試験の準備に追われる日々の中で、また陽子に会った。墓地で最後に会ってから四年近い歳月を隔てて、またあのカフェテリアに桐子を訪ねて来たのだ。
社長秘書としてキャリアを積み、以前よりもずっと多くの男達から熱い視線を送られる女に成長した。誰にも負けない自身があったから、もう何度も正規に近づいたのに・・彼は落ちない。だから桐子の事が気に為って、見に来たのだが。
桐子の変化は、陽子とは違っていた。
女としての魅力では無く。もっと人としての能力と感性、知性と強い意志に満ちた変化だった
「久し振りですね。陽子さん」
何の躊躇いも無く、陽子に声を掛けて来た。
最初に会ったカフェテリアで再会したカノジョは、勉強に追われているらしく。テーブルの上には、法律の専門書や問題集などの厚い本が広げられている。
「正規と・・一緒に暮らしてるのでしょう」
探りを入れて来る陽子を見て、昔懐かしい同胞に会った様な気分だと、桐子は思った。
「陽子さんは、正規の何処が好きですか」
率直に聞いて来るから、呆れた。
「それって、恋敵にする質問じゃ無いわ」
気色ばんで答える陽子に笑い掛け、明るく話しかける桐子が理解出来ないし、不気味だ。
「前にお会いした時、貴女は彼の愛が熱くて激しいから夢中にさせられたって言ってましたよね」
「確かに、アレは麻薬の様に凄いですものね。搦め取られたら、逃げ難い危険を孕んでいます」、穏やかに解析して見せる桐子。
理論的すぎる解釈だと、陽子は眉を顰めた。
「アナタったら、真剣に愛された事が無いんじゃないの?彼にね・・本気で愛されたら、抜け出すなんて出来ないわ。とっても情が深いのよ」、桐子を傷付けて遣りたかった。
陽子が欲しくて堪らないモノを、冷静に分析して見せる目の前の彼女が許せない。
「それ程、彼にのめり込めるなんて凄いですね。なのに彼を裏切れる貴女の勇気には、敬意を表します」、嫌味を言っているのかと睨む陽子。
また笑い掛けながら続けた桐子の言葉に、今度は驚き呆れた。
「私は離して貰う為に逃げて、今は隠れてます。私は自己を確立して独立したいの」
「自分の独立に、私は真剣なんです」
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