戦いの火蓋は切られた

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 *****  指定時刻の5分前にさつき銀行へ到着した。  俺と聖時。  それに工藤も同行した。  案内の女性に声をかけると「お待ちください」と返答され、その後別室へ案内された。  俺を真ん中に同じソファに一列に座り、出されたお茶を一口含む。  緊張しているのか、誰も言葉を発しない。  10分程度待っただろうか…… 「ふう」と、大きく息を吐き出したところで、扉を大きくノックする音が響いた。  その音に三人とも視線を向けた。  ようやくご対面だ。  メガバンクさつき銀行の融資課長。  どんな男か興味はとてもある。  そりゃあそうだ。  なんと言っても聖時の彼女のお兄さんでもあるわけだ。  彼女の姿を思い出す。  会ったのは2回。  会ったというのかすれ違ったというのか……  それでも、彼女に感じたイメージは可憐で清楚な白い花だ。  ほんのりと聖時を包む。  聖時が変わったのは間違いなく彼女のせいだ。    この聖時を180度も変えてしまった彼女の兄。  ほんわりとしたイメージを勝手に抱いてしまっていた。      あんなにも穏やかな人ならば……  話も穏やかに進むんじゃないか。って……  だけど。  俺の浅はかな考えは一瞬で消え去る。  一瞬だ。  本当に……  それはすぐさま危機感へとシフトチェンジされた。
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