戦いの火蓋は切られた

34/35
前へ
/141ページ
次へ
 その音にまたしても皆が視線を向ける。  扉が開くと新見さんよりかなり背の高い男性が颯爽と現れた。  部屋に入って来ただけで……  空気が変わる。  それを肌で感じて……  俺の中に緊張が走る。 「申し訳ない、お待たせしました。」  落ち着いた低い声音が部屋に響いた。  ピリッとした緊張に包まれた。  慌てて腰を上げて、男性と対峙する。  鋭い瞳が絡む。  ……これは、一筋縄ではいかない  俺の五感がそう叫ぶ。  スラっと背が高く、モデルと言われても納得出来るくらい整った顔つき。  ゾクッと鳥肌が立った。   「いえ、こちらこそお時間を作っていただき感謝しております。」  男性に深々と頭を下げた。  俺に続いて工藤と聖時も頭を下げる。  瞳の鋭さも表情も一切変わらない。  真っ直ぐに見据えられたまま男性はまた口を開いた。 「お座りください。」  言葉と一緒に添えられた右手はソファに座るように促している。  俺より……  背は高いかもしれない  それもあって威圧感も凄い。  軽く会釈をして「失礼します。」そう言いながらソファに腰を下ろした。 「……星野……聖時…さん?」  俺の瞳をまっすぐに見つめて、男性はそう訊ねてきた。 「いえ、聖時はこっちです。」  右手で聖時が座っている左を示した。 「始めまして。星野聖時です。」  聖時のいつもより緊張している声音。  それでもその瞳は真っすぐで強い。  男性は聖時と瞳を絡めて暫くの沈黙が流れた。 「……課長?」  新見さんに名前を呼ばれて男性は身体を動かした。 「失礼。」  そう言葉を発しながら懐に手を入れて名刺を取り出した。
/141ページ

最初のコメントを投稿しよう!

388人が本棚に入れています
本棚に追加