全てを守るための決断

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 先に見えたコンビニの駐車場に入る。  そこに車を駐めて、静かに流れていた音楽を止めた。  真剣な瞳を悠子さんに向ける。 「もし仮に、悠子さんの言うことが本当に我儘で俺にはどうすることも出来ないことなら、そう言います。  だから、自分の胸の中にためたままにしないで、俺に全てを吐き出してください。  俺は……  あなたに何も与えられない子どもじゃない。  俺は聖時じゃない。  あなたを全て受け入れる。」  悠子さんの瞳がまた揺れる。  悠子さんの太ももの上でギュッと握りしめられた両手を取った。 「俺はあなたが好きだ。  だから、あなたが考えていることは何でも知りたい。  何も言われない方が……苦しい。」    悠子さんの瞳が赤く潤んできて、今にも涙が零れそうだ。  その愛しい表情に小さく笑う。 「……あの……」  色気を含んだ声音が震えている。  悠子さんは視線を逸らして俯いた。 「…………」  悠子さんの次の言葉を静かに待った。 「…………あの…………」 「……ゆっくりでいいですよ。  ゆっくり教えてください。  悠子さんの心の中……」  悠子さんは俺の手をグッと握り返してきた。 「……あの……本当に……うれしくて……」  悠子さんは俯いたままぽつりぽつりと言葉を紡ぎ始めた。 「煌人さんと……お付き合い……出来ることも……信じられない……くらいで……」  悠子さんの言葉が……  俺の心を徐々に熱くする。  熱く  熱く……  焦がすんだ。
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