全てを守るための決断

24/35
前へ
/141ページ
次へ
「それなのに……  悠子は……  もっと……もっと……望んでしまう……」  俺の手の甲に突然感じる熱い雫。  それが涙であることに気が付いて「悠子さん」名前を呼んだ。 「煌人さんと……」  悠子さんが顔をあげた。 「ずっと……一緒にいたい」  ドクンッ!!  大きく心臓が跳ねて、悠子さんを抱き寄せた。  細い肩が小さく揺れる。  柔らかい髪が頬に触れて……  優雅に甘く香ってくるローズ。 「……今はまだ……悠子は……聖時さんの婚約者のまま……  ですから……それが無理なことも……わかっていますわ……」  悠子さんの俺への想いが溢れてきて…… 「……だから……これは……悠子の我儘ですの……」  悠子さんは俺の腕の中でふ~と息を吐き出した。  そして……  俺の胸元をギュッと掴んだ。 「煌人さんと……離れたくない。」  悠子さんの……想い。  俺の胸をこれほどまでに焦がす人は……  生涯この人以外現れない。
/141ページ

最初のコメントを投稿しよう!

389人が本棚に入れています
本棚に追加