全てを守るための決断

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 *****    ───決戦の日。  聖時と共に知事の元へ出陣する。  聖時と知事の元へ行くことを工藤に話すと、工藤自ら運転することを望んだ。  今回の事は俺と聖時の問題だから、工藤は来なくてもいいと断ったが 「俺は全てを見届けます。」  強い瞳でそう言葉にした。  工藤に小さく笑って「ああ、そうか。それなら頼むよ。」肩を叩く。  工藤が運転するレクサスに聖時と一緒に後部座席に乗り込んだ。 「いよいよだな。」  真っすぐに前を向いて聖時に言葉を投げた。   「……ああ。」  聖時の声音が緊張しているように聞こえた。  まあ、実際俺も緊張している。  あの強大な岩に……  俺は何度もなぎ倒されてきた。  チラッと聖時に視線を向ける。  見慣れた聖時の端正な横顔。  俺に対してはいつも生意気で……  俺の言うことなんてきいたこともない。  それでも今日は……  これほどまでに心強い相手はいない。  あの強大な岩に  聖時と一緒に立ち向かう。  轟の屋敷の前に到着すると、静かに開く門扉。  もう何度ここへ来たかわからない。  工藤はいつものように車を中に進めた。  車を駐めると、バックミラー越しに工藤が視線を向ける。  俺と聖時を見た後に 「ここで待ってます。」  そう言葉を続けた。 「ああ。」 「そうだな、工藤。  幸運を祈っててくれ。」  聖時が頷いた後に、工藤にそう答えた。 「幸運はお二人が運んできますよ。  俺はここでのんびりその幸運を待っているだけです。」  工藤はニッと口角を上げて笑う。  工藤の心からの激励。  その言葉にフッと笑う。  どうしようもない緊張が……緩んだ。 「行ってくる。」  力を込めて工藤にその言葉を放った。
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