全てを守るための決断

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「ククククク」  聖時の真面目な言葉に知事は大きな笑い声を漏らした。  そして鋭い瞳を聖時に向ける。 「正真正銘の大馬鹿野郎だね。  この間話した内容がわからなかったのかね?」  ……この間……?   「充分過ぎるほど理解しています。」  この間とは……  きっと知事が聖時に会いに行った日のことだろう。  二人が何の話をしたかは知らないが……  良いことを言われたとは到底思えない。  聖時は怯むこともなく冷静に答えた。 「理解していて、この時期にこんなことを言い出すなんて、本当に救いようがないね。」  無表情で冷めた瞳が突き刺さる。 「どう思われてもかまいません。」  聖時はきっぱりと言い返した。  知事は表情を変えることなく聖時から俺に視線を向けた。 「煌人くんも同行しているということは、この究極に頭の悪い選択に賛成なのかね?」  一応、俺の意見も聞いてくれるようだ。 「そうですね。  しかし……究極に頭が悪い選択肢だとは微塵も思ってはいません。」  知事に瞳を真っすぐに見つめて声を張った。 「父とも聖時とも話し合った結果です。  総合病院の話は星野にとって、夢のような話です。  だけど、やっぱり……  俺たち星野が目指すべき道はそこではない。」 「じゃあ、どこだと言うのかね?!」  知事は苛立ちをあらわにした。 「もっと……」 「もっと、身近な場所です。」  聖時と言葉が重なる。  それに気づいて、聖時に言葉を譲った。
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